レザークラフト、革の種類と選び方のポイントとは
皆さんこんにちは
ハピメイド手芸教室のmichiyoです。
レザークラフトの楽しみのひとつに、皮革選びがありますよね。
完成品を想像しながら革を選ぶ時はいつでもワクワクします。
でもお店にはたくさんの革が並んでおり、初心者にとっては悩むこともあるでしょう。出来映えに差も出ますし、正直安いものではないので、慎重に選びたいものです。
ちなみに生地の場合は、繊維の種類や織り方の違いにより、それぞれ名称が付いていて分かりやすく区分けされています。
革の場合には動物の違い以外にはどんな選び方のポイントがあるのでしょうか?
今回は、レザークラフト専門店「ぱれっと」さんに、革選びのポイントについて伺ってみました。
革選びのポイント
私は生地選びには自信があるのですが、革の選び方となるとさっぱりでして・・。初心者はどうやって革選びをすればよいのでしょう?
用途から選ぶか、製造工程を含めた革の特徴から選ぶか、の2パターンで説明すること(聞かれること)が多いですね。ところで「皮」と「革」の違いはご存知ですか?
「皮」と言うと何だか動物そのものといったイメージですね。「革」と言うと手が加わった後のような・・・
革の特徴(製造工程)から選ぶ!
- ヌメ革(タンニンなめし革)
- クローム革(クロムなめし革)
ヌメ革の特徴
1つは、タンニンを使ってなめした革 いわゆるヌメ革(タンニンなめし革ともいわれます)です。
ヌメ革の特徴としては、後述するクローム革よりも、一般的にハリやコシがあり、かっちりした革小物を作るのに向いています。何よりエイジング(経年変化)を楽しめるのが特徴です。
価格もクローム革よりは高い傾向にあります。
またヌメ革の中でもさらに、ドラムなめしとピット槽なめしの2つに分けられます。
ドラムとは革をたくさん入れて回す大きな大きな洗濯機のようなものです。
ピット槽は革を吊るして沈めておくプールです。
薬品濃度の異なる複数のプールへ順番に漬け込んでいくため、時間がかかります。ドラムで革を回さないためなめし工程での革へのダメージも少なくすみます。
ドラムなめしのほうが、ピット槽でのなめしより早いため、価格も ドラムなめし<ピット槽なめし となることが多いです。
ヌメ革は裁断面(コバ)を処理剤(トコノールやトコフィニッシュなどのトコ磨き剤といわれるもの)で磨くことができます。
磨くことで繊維がぎゅっとつまり、ツヤが出ます。
そのため、ヘリ返しの必要がなく、手縫いに向いています。
レザークラフト、と言われるとヌメ革がつかわれることが多いです。
表面を水で湿らせれる革の場合は、刻印がきれいに打てます。
ヌメ革の可塑性を活かして、濡らした状態で形を作って乾かすことで、その形状で固まります。作品例はこちら。
当店が切り革で扱っている商品の中でヌメ革は下記のものとなります。
サドルレザー ピット
サドルレザーは革の固有名詞ではなく、もはや一般名称となっています。
昔は馬のサドルを作るのに使われていたのが由来です。
オイルを含み、適度に柔らかさもあり、経年変化でアメ色へと強く変化します。
表面はグレージング加工(ツヤを出す加工)がされているので、最初からツヤがあります。
当店でも一番売れている革で、レザークラフトといえばこれ、という感じですね。
牛ヌメスムース ドラム
メーカーが名称をつけています。ハリの強い革です。
タンロー ピット
タンニンなめしローケツ染め用の略称で、タンローです。
これも一般名称化していますね。
染色しやすく、刻印等も打ちやすいため、クラフトに向いている革です。
ひと昔前(30年ぐらい前)のレザークラフトでは、ほぼほぼタンローが使われていたそうです。
ちなみにこれらの革の名前はタンナー(革をなめす工場主)もしくは製造依頼を出した革問屋が命名することが多いようです。
クローム革の特徴
次にクローム革についてです。
クロム革、クロムなめし革、とも言われます。
なめしの工程で金属のChromeが使われています。こちらはドラムなめしのみです。
ヌメ革より仕上がりは早い傾向にあります。
特徴としては、ヌメ革より安価で、柔らかく、革も薄いものが多いです。
またクローム革は耐火性、耐候性にも優れています。
一般の製品に使われるのは、クローム革のほうが多いでしょう。
衣料用にも使われます。
ヌメ革と違って、裁断面を磨くことはできないため、専用の薬剤(コバコートとか)を塗るか、袋状にしてひっくり返したり、ヘリ返しをしたりします。
また、刻印を打ったりすることはできません。
可塑性もないため、ヌメ革のように水で湿らせて形を作ることはできません。
当店ですと
ドラムダイ、ピッグスエード、ミンクル、ラーチェなどはクローム革になります。
補足としては、タンニンとクロームを半々ぐらいでなめしたものをコンビなめしと言ったりもします。
またお値段の違いもこういう理由があったのですね。
では次に用途に合わせて革を選んでいただくポイントをご紹介しましょう
用途に応じて革を選ぶ
- 好きな色で選ぶ
- カービングや刻印がしたい
- 好みの風合いにしたい
1、好きな色で選ぶ
色から選ぶお客様は意外といらっしゃいます。ヌメ革よりもクローム革のほうが明るい色が多い傾向があります。
(ヌメ革で染料仕上げのものなどは、パステル系の色は出せません。反対にクローム革は顔料仕上げとなるものが多いため、カラフルな色を出すことができます)
そのため好きな色がある革を選んでいただくのは1つの指標となるでしょう。
当店ですと、ヌメ革にしては異例の20色あるドエリアを
切り革でも30色そろえたクローム革のラーチェをカラーバリエーションが豊富なものとしてお勧めしています。
2、クラフトしたい という場合
カービング(革に模様を彫ること)
刻印(スタンピング)や染色
をしたい、という方は多いです。
染色やカービングができない革も多いため、注意が必要です。
基本的に無地のヌメ革が対象です。
当店の切り革ですと、
- タンロー 染色、カービングどちらもgood
- サドル 染色、カービングどちらもできるけどgoodではない
- ELタンロー 染色、カービングどちらもgood
- 牛ヌメスムース 染色はgood、カービングはやや
- ハーマンオークレザー カービングに最高
- ピサーノ 染色はまあまあ、カービングはやや
- ドエリアの生成 染色、カービングどちらもgood
という感じです。
ちなみに、上記の革は革の表(吟面)から水が入り込みます。
例えばヴィンセントやルガトショルダーは吟面で水をはじきます。
染料は水性とアルコール系の2種類ありますが、水をはじくようであれば、どちらにせよ、染色はできません。
そのため、色付きの革(ヴィンセント、ティーポ、アラバスタなど)では、クラフトはほぼできない、ということになります。
※例外的にナチュラルカラーヌメは素揚げなので、クラフト可能です。
3、お話を聞いて、ご希望の特徴に合わせて
革の表面はマットな風合いがいい、もしくはツヤがあるほうがいい、ややハリの強いカチっとしたものが作りたい、しなやかで柔らかめの仕上がりにしたい
などの要望を聞いて、あてはまる革をおすすめします。
でもこれまで漠然と眺めていたものが大分スッキリしました。
特に、革を全体的に比較するような形で特徴を説明できれば、お客様もわかりやすいかなと思いますが、なかなか大変で・・・
「ぱれっと」さんってどんなお店
今回お世話になった「ぱれっと」さん、レザークラフトファンにとっては有名なお店ですね。
協進エル、クラフト社、誠和などレザークラフトのメジャーなメーカーの取り扱いはもちろん、皮革も半裁革、切り革、牛革、豚革、ヘビ革、羊革、床革など・・商品の種類も豊富です。
また経験豊富なスタッフが教えるレザークラフト(全般)、仕立てコース(ミシン)教室もあり、スキルに応じて基礎から応用まで学ぶことも出来ますよ。